津市総合計画の策定への展望(その1)
津市では、平成19年度末を目途に「津市総合計画」の策定に向けて、取り組みを進めています。現市長の考えでは、自治基本条例の策定も意識はしているが、まずは総合計画の策定を優先させたいというスタンスのようです。総合計画は地方自治法に基づき策定が義務づけられている計画であり、市政全般の基本となる最上位の計画ですから、合併から既に1年以上経過した現在としては一刻も早く策定する必要があることは確かですが、その内容、位置づけ等については、幾つか留意すべきことがあります。すなわち、策定方法(住民参加のあり方、市長のリーダーシップ)、計画期間(市長の任期との関係)、構成(理念や哲学、まちの将来像を明確に示すか、)位置づけ(マニフェストとの関係、行政評価との関連性、予算や施策への反映)、他の計画(部門別計画、実施計画等)や条例(自治基本条例等)との関係、実現可能性(事務事業へのブレークダウン、進行管理)などです。
いずれも重要な論点ですが、まず、策定に当たっての住民参加について見てみます。
松田市長は、平成19年第1回定例市議会での施政方針において、次のように述べています。
「まちづくりの基本となる最初の総合計画につきましては、平成20年3月の策定に向けて、市民の約10パーセントに当たる「3万人以上の参加」を目標に掲げ、より多くの市民の皆さんのまちづくりに対する思いや行動力を引き出しながら、一緒にまちづくりに取り組んでいくことができるような指針としていきたいと考えています。
その一つとして、昨年末に募集しました「元気づくりプラン」へ応募いただいた皆さんなど、まちづくりへの関心、意欲のある市民の皆さんに、懇談会等への参加を呼びかけ、協働のまちづくりに向けた具体的な取組を進めてまいります」。
3万人もの市民参加とは、かなり大掛かりな、あるいは様々な取り組みが必要になるでしょう。多くの市民の意見を聞き、参加を得ることは極めて重要かつ必要なことだとは思いますが、単純に多ければ多いほどよいとも言えず、また、参加の形や中身はどうでもいいとも言えません。老いも若きもいるし、忙しい人も関心の薄い人もいる中で、全人口の10%というのは、直感的には多すぎるような気がします。(3万人という)数値目標の達成が最優先目標になる危険性があります。
さて、具体的にはどのような手順で策定するのでしょうか。市では平成18年8月に「津市総合計画策定の進め方について」を取りまとめ、ホームページ上で公表しています。それを見ますと、庁内に部次長以下の職員で構成するプロジェクトチームを設置し、計画策定に必要な基礎調査等の実施とその結果を踏まえた素案を作成を行い、この素案を基に、今度は部長級以上の職員で構成する「試案作成会議」において計画試案の作成を行い、その計画試案は庁議に諮って決定されます。計画試案を受けとった市長が、各地域審議会と総合計画審議会での審議・答申等を経て、計画案として決定されます。最後にそれを市議会に諮り議決されて正式な総合計画になるという流れになっています。このように、メインの流れの中に市民の参加・関与は組み込まれていません。「策定手順フロー図」を見ると、市民は庁内での試案策定段階と審議会(総合計画審議会、地域審議会)での審議に横から矢印が伸びて「参加、意見反映」するような形になっています。具体的な方法はと見ると、
・住民意識調査(平成17年度実施)
・移動市長室による公聴
・元気づくりプランの市民公募
・まちづくりシンポジウムの開催 など
そして
・インターネット等を活用した市民からの意見聴取
といったメニューが書かれています。
果たして「3万人の住民参加」が、これらのメニューのどれによって、いつ行われるのか、具体的に説明されていないのでよく分かりません。まさか、既に平成17年度に実施した意識調査(7,000人を対象。回答率は42.8%)をカウントに入れたりはしないでしょうが、シンポジウムに参加するだけでも「総合計画策定への住民参加」になるのだとすれば、いささか不純になるような気がします。素案、試案、正式案のどの段階かにかかわらず文章化された一応の案を作ってしまうと、「そもそも論」的な意見は出にくくなりますし、「部分」「断片」に対する意見や単なる感想・要望が大半を占めるようになってしまいます。その意見を出すのもごく一部の少数の市民にとどまり、多くの市民から見ると「役所か誰かがもう作ったんだ」と受け止め、当事者意識が芽生えることは難しくなります。総合計画審議会の第1回会合(H18.11.30)でも、委員からしっかりとした市民参加の審議を求める意見が出ていますが、それに対する具体的な説明はありませんでした。実施段階でいろんな工夫の余地はあると思いますが、基本的に現在の案は本格的な住民参加(住民が主体的に素案策定作業に従事するような)は考えていないようです。
30人規模の審議会でさえ、すべての委員が意見を述べることは十分にできかねています。H18.2.28の第2回では3時間かけて議論をしましたが、委員は各地域や各分野を代表して選ばれてきているので、順次発言する際にはそれを背景に主張をします。すると、バラバラに色んな意見が出る形になってしまいますから、やがて他の委員もストレスが溜まってきて「これでは議論になっていない」「審議のやり方をまず決めよう」という意見が出ていました。ごもっともな意見ですが、それを交通整理して、全員が納得・満足する形を見出すのは至難の業だと思われます。選抜された、固定メンバーでさえこのような状況に陥るのですから、広く市民の意見を聞く、市民が参加するというのは、響きはいいですが、実際にどうやるのか、そのやり方で本当にいいのか(有効なのか)ということに対して提案や批判が出てくることは容易に想像がつくわけです。そこには、明確な方針と手法が不可欠であり、それを打ち出すには、相当の経験の裏づけを伴った判断(割り切り)がないといけません。それを仕切る人材(あるいは組織)を見つけてきて全幅の信頼を寄せて任せるべきですが、かといって白紙委任するわけにはいきませんから、実行する方針や手法、スケジュール、役割分担などが明確に提示され、多くの関係者がそれを理解して納得することも必要です。少なくとも、現時点での津市のやり方には、リーダーシップが取れる人物や組織の存在は見あたりませんし、策定フローは極めて単純でほとんど理念も戦略もなさそうに見受けられます。つまり、今後の見通しは不明(または暗い)であり、成功する予感が持てない、と言えそうです。
以上のような点で、「3万人の市民参加」という方針の有効性については懐疑的にならざるを得ず、実質的な住民参加には到底ならないのではないかと懸念されます。今後このような見方が解消される可能性は低いと思いますが、総合計画審議会の2回の議事録を見ますと、何人かの委員から委員による主体的・積極的な参画・関与、そして本格的な住民参加の必要性、重要性を訴える意見が出ていましたので、多少期待を持ちながら展開を見守る価値はあるかもしれません。それにしても、市当局が変える勇気を持たなければダメなわけですが‥‥。


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