町田市ごみゼロ市民会議を傍聴して
近場の自治体のHPをあちこち見ていたところ、町田市のホームページに「公開を予定している会議の日程一覧」というコーナーがあり(こういう情報発信をしているのは珍しいですが、いい姿勢だと思います)、その中で面白そうなものを探したところ「ごみゼロ市民会議」というものを見つけました。市民主体で運営される会議のようであり、ごみ問題という市民生活に密着する問題に対して市民がどのように取り組んでいるのか興味を持ちました。
まず、「ごみゼロ市民会議」の背景などを簡単に説明します。
平成18年3月に新たに町田市長に就任した石阪丈一市長は、6月の定例市議会での姿勢方針において、次のように述べています。
「ごみ問題も、より良い環境を次世代に引き継ぐためにたいへん重要な課題であります。ごみは、人が生活することで発生します。しかし、ごみは資源化することでごみではなくなります。我々の生活に大きな利便を与えてくれるプラスチックの処理問題を含め、究極の目標である『ごみゼロ』を目指し、市民の主体的な参加を得て、生活者の知恵を集め、これまでの資源化に加えて生ごみの堆肥化への取り組みなどを、市民と一丸となって進めてまいります。」
広報まちだの平成18年7月11日号で、「ごみゼロ市民会議委員の募集」が行われました。募集内容はこのようなものです。
対 象:市内在住で18歳以上の方で、ごみゼロに向けたごみの減量・資源化に関心があり、検討された方策を自ら地域で積極的に実践していただける方
募集人員:50人程度(応募多数の場合は抽選となる場合があります)
活動内容:ごみゼロに向けたごみの減量・資源化の方策を委員相互で話し合いながら検討し策定します。会議は月1回程度、土・日曜日などの開催を予定しています。
委嘱期間:2006年9月から2007年8月までの予定
謝 礼:1回につき2000円
また、「町田市ごみゼロ市民会議設置要綱」を見ると、「第2 所掌事項」に次のように書かれています。
市民会議は、次に掲げる事項について調査、検討し、その結果を市長に報告する。
(1)ごみの発生抑制に関すること。
(2)ごみの分別の徹底に関すること。
(3)プラスチックの分別収集及び再資源化に関すること。
(4)前各号に掲げるもののほか、第1に規定する目的を達成するために必要な事項
さて、第1回の市民会議は平成18年10月7日に開催されました。委員は予定人数を大幅に超える応募者全員を委員に任命したため、その人数は134名となりました。その構成は、男性が63%、女性が37%、平均年齢は61歳、最年少・最高齢は、男性が30~80歳、女性が22~75歳となっています。その他、アドバイザーが5名、事務局以外に20名の職員がサポーターとして参加し、市民と共に働くことになっています。
さて、改めて言うまでもなく「ごみ」は日常生活に最も関係の深い存在であり、その「減量・資源化」は極めて切実な問題です。おそらく多くの市民が強い関心を持ち、意見を持ち、実践をしていることと思います。その関心の強さが既に応募人数に現れているようにも思われますが、同じ市民参加でも「総合計画」や「自治基本条例」よりずっと熱心に行われたのではないかと思います。そういう意味でも、この市民会議の様子や成果には強い関心を持って注目してみたいと思いました。
第1回以降の開催状況を見ますと、平成19年7月までの9ヶ月に計11回の全体会が開催されています。当初はごみの現状、ゴミ処理の現状を勉強しつつ、フリーディスカッションを行いながら、討議・検討の進め方を議論しました。第4回全体会から「分科会」の設置が議論の俎上に上り、第5回に決定、第6回には暫定の進行管理会議が姿を現し、第7回に代表、副代表の選出を行っています。組織や体制が固まるのが非常に遅いような印象を受けますが、(市主導であれば早く決められるかもしれませんが)公募で集まった百数十人の市民が白紙の状態から議論を始めれば、これだけ回数を要したことはやむを得ないのでしょう。いや、むしろ、着実に組織・体制が整備されていったことは素晴らしいことなのかもしれません。なお、代表、副代表の選出もメンバー間の選挙で行われており、代表には2名の立候補があって現在の代表が選ばれています。このようなプロセスで代表・副代表を選出したこともある意味で驚きです(世の中では、事務局が調整して事前に候補者を内定し、根回しをして、本番では円満に選出される形をとることが多い中で)。その後は主に分科会で実質的な議論を行い、進行管理会議で全体を調整するというスタイルで検討が進められました。なお、検討体制の全体像は、生ゴミ、廃プラスチック、その他の資源拡大という3つの部会と、そのもとでの11の分科会と、広報・環境教育とごみゼロ市役所推進支援という2つのプロジェクトチームで構成されています。非常に大きな組織となっており、それが円滑に運営されて成果が出るならば、これまた驚くべきことだと思います。
さて、平成19年8月25日に開催された「第12回全体会議」は、当初「報告発表会」として開催案内がされていたものですが、生ゴミ処理の実証実験の段取りが遅れたため、通常の全体会となったものです。最終報告会は、実証実験が終了した後の11月17日に再セットされることとなり、市民会議の活動は、事実上、生ゴミ処理の実証実験関係以外は終了だそうです。
この日は、市民会議の報告書(市長への提言を含む)の案が提示され、それが丁寧に吟味、意見交換されました。会場となった町田市教育センターの大会議室には100席ほどの椅子が用意されていましたが、立ち見が出るほどの大盛況でした。会議が始まる前からあちこちで交わされた立ち話、ひそひそ話を聞いていると、各委員(特に女性)は非常に熱心であり、問題意識は高く様々な実践を行っていることがひしひしと伝わってきました。
会議が始まり、各部会等からの報告を受けて全体の報告書の取りまとめを担っている「編集会議」から報告書案の説明(朗読)がありました。報告書は「はじめに」、「提言」、「分科会等の活動報告」、「むすび」で構成され、分科会等の活動報告は20ページほどありますが、それ以外は全部でたった5ページと非常にコンパクトです。それを一つひとつ議題にして討論が行われ、2時間に渡って熱い議論が交わされました。原案への修正意見もあれば、委員の発言に対する反論などもあり、どきどきするほどの緊迫感でした。また、出された意見に対して広瀬代表が直接受け答えたり、各分科会の責任者やメンバーに回答を割り振りましたが、その的確で絶妙な対応は見事でした。発言を求めて挙手する委員に対してすべて名前を言いながら指名し、発言内容をしっかりと受け止めるとともに、それが編集会議や分科会でどのように議論されたものか完璧に把握しているようなコメントも効果的であり、その対応は素晴らしいとしか言いようがありませんでした。また、回答・説明する各責任者やメンバーも、例外なく、しっかりとした理解と認識に基づき、冷静で的確な発言をするのにも驚きました。本来業務としてプロの仕事をしている行政の担当部局でもこんなに見事な受け答えは無理ではないかと思われました。会場からの発言の中には、他の委員の意見に対する厳しい反論や批判もあり、緊迫した空気になるのではないかと危惧するような瞬間もありましたが、既にこれまでに十分議論してこなれているのか、お互いの言い分に対する理解が深まっているのか、「大人」の討論で終始したことにも驚きました。このように、フラットな関係のもと、自由闊達で伸び伸びした、意義ある意見の交換がどんどん続く会議というものは、未だかつて見たことはありませんでした。ある意味で「成熟した民主主義」を垣間見たような印象を受け、ひとり感動してしまいました。
とても素晴らしいものを見せて頂いた(しかも、何と無料で)、という感謝の気持ちでいっぱいでしたが、それでも、冷静に観察すれば、議論の素晴らしさと同じように報告書も素晴らしく、完璧だというわけではありません。私から見ても不十分な点、直した方がよいと思われる点は気がつきます。それを考えると、市民が積極的に参加していない、熱心でない議論による成果物が、いかに中身の乏しい有益でないものであるか、容易に想像がつくというものです。行政が、形ばかりのおざなりの(偽装)市民参加を仕立て上げ、計画や報告書を作るケースはまだたまに見かけます。ソレと町田市のこの市民会議とは、本当に「月とすっぽん」です。町田市のごみゼロの検討結果でも実際には十分な成果に結びつかないとすれば、おざなりの市民参加による成果物の行く先が如何に絶望的か、火を見るより明らかです。それをよ~く認識して、行政もちゃんとしなければなりませんが、市民は自ら本気で市政に参加して、その歩みを刻んでいかなければなりません。そのことを深く再認識した、有意義な一日でした。
なお、11月17日の最終報告会、そして、その後の展開を注意深く見守っていきたいと思います。身近にこんな素晴らしい研究対象がまた一つ増えたことを嬉しく思っています。


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