私は本業が国家公務員であり、県庁への出向経験が二度あります。従って、地方議会というものは、委員会には頻繁に当局側で出席しましたので、よく知っています(土木委員会や県土整備委員会、決算委員会など)。本会議には出席したことはありませんが、雰囲気や様子はかなり分かっているつもりです。 市町村の議会については、旧津市の議事録を読んだこともあり、県議会とそんなに違うものでもないということは承知していますが、一度その雰囲気を直接体験してみようかと思い、この夏、我が地元でもある川崎市議会を傍聴してきました。
感想を一言で言えば、「退屈極まりない!」。議員の質問は原稿を長々と読み上げるだけだし、答弁する側は市長をはじめ各部局長も、これまた、あらかじめ作り上げてある答弁書を棒読みするだけ。その「やり取り」が延々と続くだけなのです。質問しない議員、答弁のない部局長は、さぞかし退屈だろうと心から同情してしまいました(つまらない仕事ですな)。事前に質問通告することになっており、その通告もかなり綿密なものであるようで、答弁は漏れなく無駄なくよくできていました。答弁する際は必ず最初に「○○に関するお尋ねでございますが」と言うのが定番になっているようで、それが退屈さを増幅させていました。これは議論でも何でもなく、読み上げ合戦に過ぎませんでした。たまに事前通告していない質問をアドリブで追加した議員がいて、答弁する部長が「突然のご質問を頂き、ありがとうございます」と言いながら、実は自慢したいと思っていた実績を自説を交えながら答弁したときは、笑いが漏れたり、生身の質疑っぽくなり、雰囲気がよくなりましたが、それ以外は99%、退屈で無意味でした。
蛇足ながら脱線しますが、私の本来の勤務先の先輩(実は津高校の出身)が川崎市の助役として出向してきており、任期切れを間近に控えこの日が最後の議会出席の日ということで、終了前に退任の挨拶をしていました。傍聴席がほとんどカラ状態だったので、ときどきこちらを見上げているように見える先輩に、きづかれてやしないかハラハラし、書類で顔を半分隠していました。
さて、もう一つくらい傍聴してやろうと思い、今度は神奈川県議会に出かけてきました。9月21日(木)、この日は代表質問の二日目で、公明、自民、民主の3人の議員が質問に立ちました(全部は聞いていませんが)。主に答弁した松沢知事は、何回かセミナー等で講演を聴いていますが、いつも爽やかでよく通る声で好感が持てます。話も分かりやすく説得力があります(議員からはともかく、一般県民から見るとかなり好かれていると思います)。今日もそういう声でしたが、残念ながら答弁書の朗読だったので生の声というわけにはいきませんでした。
代表質問ですからあまりキャッチボールはしないものなのかもしれませんが、一投目の質問が長いこと長いこと。2、30分かけて延々と質問を読み続けます。質問というよりほとんど演説に近い。しかし原稿の棒読みですから聞いている方は退屈です。それに対する答弁も、事前通告を受けて綿密に答弁書を作成しており、同様に棒読みです。決して、聞かれたことに受け答えするという「議論」ではありません。 2巡目の、いわゆる再質問では、お互いに原稿を離れてアドリブで質疑をしますが、それでも実際は1巡目の質疑を繰り返すような内容にとどまり、全然面白くありませんでした。何往復もするのなら双方の実力次第で面白い場面も出てくるのかもしれませんが、再質問を1往復して終わりでした。
持ち時間の制限があるのでしょうから、本当に有効な主張をしたり意味ある答弁を引き出したいのであれば、一投目はもっと簡潔にポイントを押さえたスピーチにした上で、主張や提案を具体的に提示し、豊富な質問をぶつけた方がいいと思いますし、答弁を聞いて不満なところ、不足しているところ、気づいた新しい論点を再質問でさらに追求するスタイルでやれば、緊張感があって興味深い質疑になるんじゃないかと思います。ただし、それをやり切るには、相当勉強をしないと無理ですし、答弁を瞬時に理解し、次の攻め口を見つけていかないといけないので、高いディベート能力が求められるかと思います。レベルは人それぞれで構わないと思いますが、少なくともそういう心がけ、心構えで望まない限り、意味ある審議になっていかないと思います。現状では、質問すること(というより、与えられた質問の時間に「演説」をすること)が目的になってしまっている感じでした(ま、どこの議会でも同じようなものなのですが……)。 傍聴者は、数名しかいなかった川崎市議会に比べると、最初の質問者(公明党)のときには2、30名の傍聴者がいて、次の自民党の議員が質問したときは150名くらいいて大変盛況で、その熱心さ?に驚きました。神奈川県議会は多くの県民から関心を持たれているのか……と思いましたが、最後の民主党の議員になると傍聴者は数名に激減してしまったところをみると、純粋な傍聴者というより、議員や政党がそれぞれの支持者に呼び掛けて集めたのかも知れないと邪推してしまいました。質問が始まる前の時間に多くの議員がうしろの傍聴席を振り返り、しきりに知人と目で挨拶したり、他に知っている人は来ていないかと探したりしていたので、本当にそうなのかもしれません。夕方、近くのレストランかホテルで開催する「支持者との集い」とセットの傍聴なのかもしれません(ちょっと読み過ぎか?)。
少ない傍聴体験だけで言い切ることはできないかもしれませんが、あえて言えば、国会でも県会でも市会でも、まあ「大差ない」「似たり寄ったり」という感じです。有権者の立場から聞きに行っても、こういうやり取りによって「暮らしよくなりそうだ」「地域が変わりそうだ」という予感がほとんどしません。厳しい言い方をすれば、一見質問のフリをした演説を堂々とこなすこと自体が目的化しており、本人以外にとっては「ほとんど意義を感じない」とさえ言えそうです。議会基本条例を制定した北海道の栗山町議会や、制定目指して取り組んでいる三重県議会などではそうじゃないのかもしれませんが。議会の意義低下が指摘されていますが、このような実態では反論しようがなく、本気で抜本的な議会改革に取り組まないと、行く末は非常に深刻だと感じました。
蛇足ですが、2番目の質問者が質問の中で高校野球に触れて、早稲田実業の斉藤投手の熱投ぶりを語りながらさりげなく青いハンカチで顔の汗を拭いたのには、議会中の出席者が大いにウケました。毒気のない、ナイスなアイデアでした。
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